東アジア移住共生映画祭2010
企画趣旨
日本の少子高齢化は、必然的に、日本の労働力人口の変化を促しています。2009年11月現在、日本の15歳以上の労働力人口は6,591万人ですが、厚生労働省は2017年にはそれが374万人減少し、2030年にはさらに1,007万人が減少すると推計しています。20年後に予想される1,000万人を超える労働力の減少を日本はどのように補うのでしょうか。日本政府はいま、海外からの労働力の導入を真剣に検討しています。
日本には現在、約222万人、190カ国から来日した人々がおり、いずれも過去最高を記録しています 。その多くは東京や大阪などの大都市圏に集中していますが、研修・技能実習制度や国際結婚などを通して、実は地方の農村にも数多くみうけられます。このような人々は「労働力」として日本社会に貢献しているだけでなく、「生活者」として地域社会を構成する一員となっているのです。つまり、海外からの労働力の受け入れとは、海外から移住してくる人々の受け入れといえましょう。同様の現象は、韓国や台湾でもみられます。韓国では、全農村の結婚の4割が海外から移住してくる女性との国際結婚といわれており、東アジアの21世紀はすでに多文化圏を形成しているのです。ここに、「移住」のみならず「共生」というテーマを併せて考える必要が生じます。
近年、「多文化共生」という言葉は、日本社会ですっかり市民権を得たようです。しかし、その実態は国際交流の域をなかなか脱せず、海外から移住してきた人々を日本社会の構成員として捉える視点が欠けているように思われます。移住民への対応は、残念ながらまだまだ後手にまわっており場当たり的といわざるをえません。これからの日本社会が移住民を必要とするとしても、やはり、そもそもなぜ私たちは移住民を必要とするのか、日本に限らず東アジア全域で、否、世界規模で、なぜかくも国境を越える人の移動が増え続けるのか、そのような現象をうみだす現代世界とはいったいどのような世界なのか、そうした根本的な問いに想いをめぐらす時期にきているのではないでしょうか。
「東アジア移住共生映画祭」は、東アジアを中心に、移住民が発生せざるをえない要因を究明します。同時に、共に生きる東アジアを創るためのより根本的な「代案」を提案することも目的としています。たとえば、人々がこれ以上望まない移住をしなくてもよい世界を創るため、私たちと移住民のふるさとの村との共生のネットワークづくりに寄与しようとしています。今年、映画祭は熊本だけでなく、阿蘇、北九州、ロシアの沿海州でも開催できることになりました。将来的にはネパール、フィリピン、ベトナムでの開催を目指しています。映画祭を通して、草の根のレベルで、人間味溢れる新しい東アジアを構想し、創造していきましょう。