第7回 東アジア市民共生映画祭・2015

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企画趣旨


「東アジア市民共生映画祭」は、東アジアの人々が共に作って行く共生への夢を語っている映画を上映する予定です。これまで2007年から6回に渡って開催されてきた映画祭で、「東アジア市民」としての権利と義務に関する映画を上映して来ました。

映画を通して、東アジアの色々な事情や環境を理解し、共に暮らす新しい東アジアを作って行きたいと思っています。熊本から出発して東アジアに広がっていく、ローカルな観点とトランスナショナルな観点を共に持つ映画祭を目指しています。

特に、東アジアの多文化・環境・共生交易などのメッセージを含んだ映画を通して、共に生きるオルターナティブな東アジア像を熊本から東アジアの村々に発信していく予定です。



【企画メモ】  

       越境、変わりゆくアイデンティティー

 

時には一枚の写真が百もの言葉よりも雄弁に物語ることがある。両親と共に難民としてヨーロッパへと向かった3歳のクルディが、トルコの海岸で顔を砂にうずめたまま息を引き取った一枚の写真。その写真は、多くの人々に「今ここに難民が存在する」こと、「国境がより柔軟になる必要がある」ことを知らしめた。しかし、地中海難民は昨日今日のことではない。今年だけでも35万名の地中海難民が生まれ、そのうち15千名が地中海で最期を迎えた。しかしこれを、彼らの問題ではなく我々の問題として認識させたのは、まさにその一枚の写真であった。その写真は、ヨーロッパとアフリカ、中東アジアにまたがる「地中海市民」たちに、人権と共生の尊厳さを思い出させたのである。

 

日中韓と東南アジアをめぐる「東アジアの地中海」は一見静かであるが、実は大きくは違わない。戦争孤児や国際結婚、あるいは経済的な理由により多くの人々が東アジアの国境を叩いてきたし、今もなお叩いている。これに伴い、第7回東アジア市民共生映画祭では「越境、変わりゆくアイデンティティー」というテーマの下で、5篇の映画を選定し、越境とそれによるアイデンティティーの変化を追いかけてみたい。

 

まず、映画『はちみつ色のユン』と『イロイロぬくもりの記憶』は、国籍や人種が異なっていても、血がつながっていなくても、本物の家族になっていけるということを教えてくれる。1950年代、朝鮮戦争の孤児としてベルギーの家庭に養子として迎えられた子供が画家になるまでの成長過程を自伝的に描いた『はちみつ色のユン』は、互いに異なる肌の色の数ほどに複雑なアイデンティティーの混乱を、映画『イロイロ』は、フィリピン女性が中国系シンガポール人の家庭で働きながら経験する摩擦を、それぞれ新しい母子関係―家族の誕生を通じて克服していく映画である。映画『パパ』もまた、移民者にとっての天国であり地獄でもあるアメリカという環境において多様な文化とアイデンティティーが調和を織り成しひとつの家族になっていく過程を描いている。ここから、これら三つの作品は、越境によるアイデンティティーの摩擦を、血はつながっていなくとも互いに愛し合い、励まし合うオルタナティブ家族(代替家族)という形で解きほぐしていく「グローバル・オルタナティブ家族」映画であるといえる。

 

映画『ハーフ』は、国際結婚の子女たちが経験するアイデンティティーの混乱を描いているが、暗い告発映画ではない。近年では「ハーフ」ではなく「ダブル」という呼び方も見られるが、この映画は、彼らを「HALF」ではない「HAFU」と命名する。多民族・多文化国家へと変化していく日本において、「ハーフ」が差別語ではなく、固有で大切なアイデンティティーを表す言葉になり得るという宣言なのである。互いに支え合うことのできるネットワークの存在は、彼らにとってあたたかい居場所にもなる。

 

最後に、この映画祭のメイン作品である『危路工団』は、東アジアの女性労働者たちの姿が年代別に取り上げられ、縦糸と横糸のように組み合わさった作品である。監督はそれぞれの時空間上に存在する人々を映画のなかへと呼び込み、自身の経験と傷を語らせることによって、本人たちだけでなく観客をも癒そうとする。映画は、つまるところ移住民は遠くない過去の我々であることを知覚させると同時に、境界線を国境から東アジアへと拡張させたとき、東アジア市民がいかにして共存・共生できるのかという問いを投げかける。

 

今回の映画祭では、このように境界線の上で生きる東アジア市民の痛みと、共生への夢を映し出した。一枚の写真が、今ここで共に生きている「地中海難民」の姿をつきつけたように、この映画祭が、ここ「東アジア地中海」の内外で生きる東アジア市民の痛みに共感し、共生へと向かう想像力を刺激する場となることを願う。映画祭のために尽力した多くの方々に多大なる感謝を伝えたい。

東アジア市民共生映画祭2015実行委員長
明直





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